インタビュー
電子工学を超えたバイオセンサで、 疫病や環境問題の解決に挑む。
理工学研究科 電気電子情報工学専攻2年 北山 恵斗 さん 長房 遼河 さん


當麻先生の揺動分子センシング研究室に所属し、病気の早期発見や環境汚染をモニタリングするために分子の揺らぎを計測・活用するバイオセンサ技術の開発に取り組む、北山さんと長房さん。研究室の一期生として実験機器の自作にも取り組んできた2人に、研究の楽しさと今後の目標についてお話を聞きました。
長房:高校生の時に祖父をがんで亡くした経験から、将来はヘルスケアに関わる仕事をしたいと考えていました。大学で電子工学科を選択したのは、医療の発展に欠かせない技術だと考えたからです。 當麻先生の研究室の紹介で、目に見えない分子の測定から人の体調や疾病の状態を知ることができるのを知り、電子工学の知識をヘルスケアに生かせると思い、当研究室を志望しました。
北山:学部3年次で、いろいろなゼミについて説明を受けるなかで、電子工学から化学や生物など分野を横断していく當麻先生の研究は異色でした。ナノスケールの分子を測定して、病気の早期発見や環境保全というマクロな社会課題の解決へ繋がっていく面白さに魅力を感じたのです。学際的な知識と技術を生かしながら揺動分子センシングについて研究したいと思い、ゼミから研究室へ進みました。
長房:當麻先生のキャラクターに惹かれたのも志望理由でした。當麻先生は誰に対しても気さくに接してくださるうえに、子どもの送り迎えもサラッとこなす家族思いのイクメンです。研究者には珍しいタイプかもしれません。
北山:いつでも、質問の対応をしてくださるし、私たちを支えながら一緒に成長していこうという気持ちを感じます。和やかでありながらも、相互に刺激を与え合う研究室の雰囲気は、先生のキャラによるものだと思います。

長房:北山くんと私は、そんな當麻研究室の第1期生です。学部時代は同じ学科だったのに、コロナ禍の影響もあって、ゼミで顔を合わせるまでほとんど接点がありませんでした。
北山:そうでしたね。先輩もいなくてゼロからのスタートだったので、長房くんとは苦楽を共にして連帯感が深まりました。まだ実験の設備が整ってなかったので、ホームセンターで材料を買ってくるなどして自分たちで作った機器がたくさんあります。
長房:私たちが作った機器を使って実験している後輩たちに、ちょっと自慢したい気がしますね。
北山:私が研究室で初めて作ったのはナノファイバーの作製装置でした。何度も失敗して、當麻先生に相談して装置内を除湿したらうまくできた。研究室に入って初めての成功体験だったので今でも忘れられないです。
長房:大変だったけど、自分の手でものをつくる楽しさを味わうことができた。一期生ならではの貴重な経験だったと思います。ありがたいことに、金属加工からプログラムまで、芝浦工業大学には各分野のエキスパートがいます。みんなが快く協力してくれたおかげで、実験に必要な装置を自作することができました。
北山:その時に作った装置を使って私が研究しているのは、環境中の分子を測定するセンサの開発です。目には見えませんが、私たちが暮らす空間にはさまざまな分子が漂っています。人や環境に有害なものを検出することで、対策をとることができる。原理としては分子に光を当てて、反射や透過によって測定するのですが、化学や生物の分野については手探りのため苦労しています。
長房:私は血液や脳髄液などの体液中の生体分子から、セロトニンの量を測定する研究を行っています。セロトニンは幸せホルモンと呼ばれており、その量をモニタリングすることで、うつ病の早期発見や治療効果の客観的評価への活用が期待されています。まだ生体サンプルを使った測定実験の一歩手前ですが、自分たちの測定結果が人々の健康に貢献するデータになるかもしれないと考えると、失敗も苦になりません。
北山:研究の成果を世に出すことも重要ですが、その過程で学んだ失敗を成功に導くプロセスを通じて、社会に貢献できると考えています。私は大手光学機器メーカーへ就職する予定なので、研究室やグローバルPBLに参加した経験を生かして、海外でも活躍できるエンジニアを目指します。
長房:私はライフサイエンス関連の事業を展開している企業を志望して就職活動中です。研究で培った分析計測技術により、疾病の早期発見や低侵襲治療を実現したいと考えています。