インタビュー
AIに対する知見を生かした、セキュリティシステムを開発したい。
セコム株式会社 森田 悠馬さん
(理工学研究科 システム理工学専攻 2022年修了)
大学院時代には応用脳科学研究室に所属していました。私が取り組んでいたのはAIによって脳の活動を識別し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで体が動かせなくなった人の考えを読み解く研究です。例えば右耳から音楽と左耳から朗読を同時に流します。そして質問に対してYESであれば音楽、NOであれば朗読に意識を向けていただき、脳活動から本人の考えを識別するのです。応用脳科学研究室に所属していた頃がちょうどコロナ禍だったので、海外へ赴いて研究成果を発表することはできませんでしたが、国内の学会に2度参加できました。力を入れて研究活動に取り組んできたので、現在私が働くセコム株式会社の最終面接の際に、技術開発本部の役員が研究内容を熱心に聞いてくださったのは嬉しかったです。私のAIに対する知見をどうすればシステム開発に生かせるのかという話をしてくれました。これほどまでに自分に関心を抱いてくれた企業は初めてだったので、ここで力を尽くしたいと決心しました。
セコム株式会社には大きく分けて家庭向けと法人向け、2つのサービスがあります。私が現在携わっているのは法人向けセキュリティシステムの開発です。最近では企業などでセキュリティをかける際、機器を操作した人を映像で確認できるサービスの開発に参加しました。私はシステムの動作の評価を担当しており、何度も発生するバグを報告し取り除いてもらう作業に骨が折れました。地道な作業は研究室での脳計測を思い出しました。こうすれば上手くいくという方法にたどり着くまでの導き方は今でも生かされています。このシステムはすでに実用化されており、自分が開発に携わった製品を街で見かけた瞬間は開発職冥利に尽きます。最もやりがいを感じる瞬間です。
まだまだ経験が浅いですが、将来的には応用脳科学研究室で培ったAIに関する知見を生かして製品開発をしてみたい思いがあります。最近では顔認証の技術を用いたサービスが多く見られますが、私は人の歩幅やその動き「歩容」で本人かどうかを識別するAI技術に注目しています。歩容は簡単に似せられるものではないため、このような技術が応用できれば、より厳重なセキュリティが実現します。これからも最新技術の情報などを積極的に入手しながら、自らの能力向上と新たなシステムの開発に努めていきたいです。
現在、就職活動をしている後輩たちに対しては、上手くいかない時には将来のビジョンを考えてほしいです。例えば、働く場所や地域というのも重要だと思います。私は出身が関東圏だったため、その近辺で勤務できることを重視しました。将来を見据え、その地域で長く働いていくイメージができる企業に就職することをお勧めします。