インタビュー
実用化を目指して社会貢献性の高い研究テーマに挑戦する。
理工学研究科応用化学専攻2年 平田 碧生さん(左)/桜井 日陽さん(右)
医療用センサチップの開発を行う平田碧生さんと、魚中のヒスタミン濃度を測るセンサの開発に取り組む桜井日陽さん。修士生として研究に没頭する2人に化学工学研究室での活動についてお話しいただきました。
平田:化学工学研究室に興味を持ったのは、今ある技術を発展させる研究を多く取り扱っていたからです。世の中に存在しないものをゼロから生み出す作業よりも、自分の性に合う気がしていました。
桜井:実用化を意識して研究を進めるのも化学工学研究室の特徴の一つですよね。研究のゴールが設定しやすいですし、もしも実用化に成功した場合は社会貢献にもつながる。私はそういった点も魅力に感じました。
平田:そうですね。私の研究もやはり実用化を目指して取り組みました。具体的には人に適量の薬を投与するための医療用センサチップの開発です。現在、人の血中の成分を調べる検査には数時間かかってしまいますが、数秒単位で測定できて長期に保存できるセンサチップを目指しました。
桜井:私は主に赤身魚で発生し、食中毒を引き起こすヒスタミンの濃度を測る研究に取り組みました。安価に提供できて簡単に使えることを重視したのは、管理環境が十分ではない発展途上国での使用を意識したからです。
平田:大学内の研究に留まらず、商品化を実現したいという思いは開発の原動力になると思います。
桜井:そうですね。海外だと魚を流通させる時にヒスタミンの濃度の測定が義務づけられている国が多いんです。商品化できればあらゆる国で安全に魚が食べられますし、日本の生魚の流通にも貢献できます。
平田:私の研究では抗菌薬が効かなくなる「薬剤耐性」が重要なテーマになっています。薬剤耐性による死者は年々増加傾向にあり、2050年には世界で約1000万人に達すると言われているんです。社会課題の解決につながる、意義深い研究だと感じています。
桜井:でもだからこそ難しいですよね。より高度な知識が必要となります。学生同士で月に1度、進捗発表をしますが、そのときにはさまざまな観点の意見が聞けるので参考になります。また、自らの知識を深める上では学会発表も貴重な経験です。
平田:先日、カナダで学会発表を行いました。私と近いテーマで研究している方が多く、かなり勉強になりましたね。世界的に関心度の高いテーマであることを再認識しました。
桜井:私はこれまでにスウェーデンとイタリアでポスター発表を経験しています。日本の学会では魚を題材にすると食いつきが良かったのに対し、海外ではワインのヒスタミン濃度の話に興味を持たれました。その国に馴染みがある食品を題材にすると発表が上手くいくというのは面白い発見でした。
平田:研究で行き詰まった際には吉見先生にアドバイスをいただくことが多いです。一番教えていただいたのは、提出する文書の表現。細かく指導していただきました。その指導力には心から尊敬します。
桜井:研究で打つ手がなくなったときに、吉見先生のアドバイスで状況を打開できたこともあります。
平田:化学工学研究室で充実した時間を過ごすことができて本当によかったです。春から分野の違う研究開発を行う企業で働くので、研究に対する考え方を生かしていきたいと思います。また、学業全般においては徳島県から上京させてくれて、大学院まで通わせてくれた両親に感謝しています。社会人になったらたくさん恩返しをしていきたいです。
桜井:実験が上手くいかずに悩んでいた時、家族が励ましてくれたおかげで乗り越えてこられました。進路に迷った時にも背中を押してくれたから、勇気を持って一歩を踏み出せました。春からは社会人になりますが、何事にも挑戦する心を忘れないで頑張っていきます。