インタビュー
住民の地域への愛着こそ、まちづくりの根源となる。
大学院 理工学研究科修士課程 建築学専攻2年 三田 伶海 さん
「人を楽しませたい」という気持ちと、まちづくりに対する思い、両方を叶えられる居場所が地域デザイン研究室でした。私は幼稚園から高校まで新体操をしており、大学に入ってからは学業と両立してダンスや演劇などにも取り組んできました。何かを表現し、人に喜んでもらうことが好きで、そのような気持ちと建築に対する学びを結びつけ、「人に喜んでもらうまちづくり」がしたいと考えました。コロナ禍で思うように活動できない期間もありましたが、これまで研究室としては豊洲の水彩まつりでクルーズガイドを実施するなど、全体としても幅広く活動してきました。また、研究室のメンバーにも恵まれていました。同期4人で役割分担しながら協力し、充実した時間を過ごせてきたと思います。
地域デザイン研究室での私個人の研究テーマは、人のコミュニティまでを創造するまちづくりです。これまでに地域の活性化につながるイベント開催などに取り組んできました。また、地域住民と一体となるための活動拠点として月島長屋学校があります。そこで私は住民によって発行される地域雑誌「佃・月島」の制作に参加しました。携わる中で驚いたのは地域の方々の制作に対する熱意です。掲載内容や発行部数、今後の展望について、白熱した議論を展開しており、制作に入れていただいた私たちは身が引き締まる思いになりました。大学内で作業しているだけでは、地域の方々の声を直接聞くことはできないので、貴重な体験ができたと思います。地域への想いが強い方たちに出会うことで、何がこのような熱意の根源になっているのか、考察するきっかけにもなりました。
研究室の活動で最も力を入れてきたのは、子どもが参加するまちづくりイベントです。「思い出と場所はリンクする」という考えから、子どものころの原体験が、地元への愛着に起因すると推測しています。思い出に残る出来事を創出するために、私は子どもが出演するダンスイベントを主催し、参加者を募ることから始め、ダンス指導までを手掛けました。子どもたちはダンスを一生懸命覚え、ステージ上で見事なパフォーマンスを披露してくれました。そのときの努力と成功は、本人たちの思い出になり地域愛へと醸成されるはずです。
研究室の担当教員である志村秀明先生は地域の人たちだけでなく、どんな人とでも良好な関係性を構築します。人にフォーカスを当てるまちづくりにおいて最も重要な能力かもしれません。研究室の活動では学内だけでなく外部の方々と協力して活動することが多く、志村先生からは言葉遣いやメールの送り方など初歩的なことから教えていただきました。春からは全国でまちづくりを推進する企業への就職が決まっており、さまざまな人と出会う仕事になるため、志村先生から学んだことを生かしていきたいと思います。多様な体験から楽しく豊かな生活を実現し、そこに住む人に長く愛してもらえるようなまちをつくりたいと考えています。また、就職してからはこれまで支えてくれた家族に恩返しをしていきたいです。研究室の活動が大変だった時、家で涙してしまうこともあったのですが、母はそんな私を笑い飛ばしてくれました。なんでも挑戦させてくれた父や甘やかしてくれる祖父、祖母の存在も大きかったです。春から一人暮らしになるため、寂しい気持ちもありますが、たまに電話したり美味しい食材を送ったりしながら少しずつ感謝の形を表していきたいです。