インタビュー
医学の進歩にもつながる、装置開発への想い。
大学院 理工学研究科修士課程 システム理工学専攻1年 金子 侑香里 さん
研究テーマの幅広さや私の目指す業界への就職実績からバイオ流体科学研究室に対する興味が芽生え、入室を決意しました。現在は赤血球の特性を明らかにする研究を行っています。赤血球は血管内を変形しながら流れており、この性質を「変形能」と言います。これよって自身よりも細い血管を通過することができます。体の隅々まで酸素を運ぶ上で非常に重要な特性です。この働きは低下することが分かっており、糖尿病などの疾患への関連性が示唆されています。変形能を調べることによって、健康な人と疾患を持つ人を見分けられるようになるかもしれません。医学的な応用にもつながる、とても意義のある研究です。
研究の過程では使用する装置自体の開発も行います。その装置を用いて変形能の定量データを取得するためのシステム全体の構築を行うことが私の担当です。これまでの装置には複数の課題があり、一部を設計し直す必要がありました。バイオテクノロジーに関する分野は学部生の頃から学んできましたが、装置の開発に伴う設計や機械加工などの知識、技術は研究室に入って一から習得したため、大変苦労しました。高度な専門知識が必要な作業は渡邉宣夫先生にサポートしていただきます。実験時に何かハプニングが起きた際には臨機応変に対応し、次々に解決策を提案する姿に研究者として憧れを抱きました。高い精度の装置を開発するために、先生からできる限り多くのことを吸収したいと考えています。また、本研究室には海外出身のポスドク※の方が所属しており、私が研究で疲弊している時に日本語で「がんばれ」と声をかけてくださることがありました。それまで私は海外出身の方と意思疎通を図ることに不安があったのですが、この経験によって想いを伝える大切さを実感しました。
学生の研究はどうしても期間が限定されている大変さがあります。私の研究テーマにおいても卒論までに納得いく研究結果を出さなければなりません。その時間制限が時に負担になります。開発した装置が思うように機能せず、原因の特定から改善までに2ヶ月ほどの期間を要したこともありました。計画通りに進行できない中で、柔軟な対応を求められることが学生の研究の難しさだと思います。しかし、困難に思えていたことに挑戦して、自分の想像通りの結果が得られた時には喜びを感じ、それまでの苦労が一気に報われます。
研究室での研究内容をそのまま将来に生かせるかは分かりませんが、ここで学んだ技術や手法は存分に役立てられると思います。私自身は今後、医療機器メーカーで働きたいと考えています。昔から自分の身の回りに医療機器を日常的に使用している人が多く、もっと使いやすくしたいという気持ちがありました。医療従事者の方たちだけでなく、患者さんも快適に使用できる高性能な医療機器を開発したいです。
大学院に進学し存分に研究活動に打ち込めているのは、地元の福岡県から応援してくれている両親のおかげです。お米などの仕送りが届いた際には愛情を感じて嬉しい気持ちになりつつ、家族が恋しくなります。感謝の気持ちは学業に一生懸命に取り組むことで表しているつもりです。希望する職種に就いて、いつか恩返しがしたいと思います。
※ポスドク:(Postdoctoral Researcher あるいは Postdoc)とは、大学院博士(後期)課程(ドクターコース)の修了後に就く、任期付きの研究職ポジションの通称