インタビュー
研究室での学びを生かしながら、設計に携わる人材を目指す。
日本空港ビルデング株式会社 古田 真梨 さん
(建設工学専攻 2020年修了)
大学院時代は建築生産研究室に所属し、蟹澤宏剛教授のもとで建設現場での女性職員の実態調査や、今後の雇用割合の拡大に向けた課題抽出に取り組みました。建設業界は職人の高齢化や若年層の減少などにより人手不足が深刻となっており、女性活躍の推進が求められている業界です。現場に何度も足を運びながら研究を進める過程で、自分自身も建設業界で活躍する女性になりたいという思いが強くなりました。就職活動の際は一つの建物を建設して終わるのではなく、その建物に長期的に携わることのできる職種を探しました。
日本空港ビルデング株式会社を志望したのは施設の計画から維持管理、修繕、増改築など多岐にわたって関わり続けられるからです。進路を決める時には学部生からゼネコンへの就職も考えましたが、蟹澤先生に相談する中で大学院への進学を決意しました。研究に取り組むことで視野が広がり、将来への選択肢が増えたように思います。進学について私の意見を尊重してくれた両親にも感謝しています。
空港ターミナル施設での業務は何よりも経験値が必要になるため、現在はグループ企業の日本空港テクノ株式会社に出向し、幅広く経験を積んでいます。これまでエレベーターやエスカレーター、飛行機に搭乗するまでの橋の整備など、さまざまな業務に携わりました。最近では主に羽田空港内のテナント店舗の入退去に伴う、防災設備や空調設備の工事管理などを担当しています。
空港ターミナル施設という特殊な仕事場での業務は、ここでしか体験できないことが多くあります。その一つが厳格に定められた航空保安に関するルールの徹底です。空港では「絶対安全」を重視しており、法律的にOKであっても空港ではNGということもあります。例えば、日中に保安区域内で工具を使用する作業はほぼ許されておらず、工事は夜間、最終便から始発の準備開始までの限られた時間で行うことが基本となっています。工具などが紛失すれば、安全上の理由によりその日の運航停止を余儀なくされてしまう場合もあるのです。工事委託業者に対して、工具の持ち込み申請や数量チェックなどのルールを、周知し徹底してもらえるよう働きかけるのが私の任務。強い責任感が必要となりますが、やりがいも大きいです。大学院時代、建築生産研究室で現場の実態について研究してきたおかげで、作業工程や作業員の気持ちを理解しながら業務を進めることができており、学びが生かされていると感じています。
入社したのが、コロナ禍が始まった時期であったため、当時は空港の活気が感じられず、少し寂しい思いもしましたが、現在は多くの人で賑わっています。空港で働いていることを実感しながら毎日楽しく働けています。また、私は空港施設の幅広い業務に携わりたいという思いで入社したため、1年目から一級建築士資格の取得に取り組んできました。休日などを利用して自主的に建築の学校に通っており、今回で2回目の受験になります。羽田空港内で新たな施設を建設する際に設計段階から携わることが目標であるため、必ず合格したいです。自らが建設業界で働く女性となった今、これから自社にとって必要不可欠な存在となれるよう前向きに能力向上に努めていきたいです。