インタビュー
グローバルに活躍したい。恩師との出会いが生んだ揺るぎない思い。
ボッシュ株式会社 花井 智和 さん
(材料工学専攻2016年修了)
私が世界を強く意識し始めたのは、学生時代の一人の教授との出会いでした。学部3年次の超伝導分野の研究室で指導してくださった、インド人のミリアラ・ムラリダ教授です。先生は学生との接し方や研究アプローチがある意味挑発的で、よく前例のないことを求めてきました。日本人の教授から学ぶのとは違った感覚があったのです。高校、大学と弓道部に所属し、上下関係などの日本的な文化の影響を強く受けてきた自分にとって、かなり刺激的な日々であったのをよく覚えています。先生の第二言語でもある英語を本格的に学びたいと思ったのも、もっと密にコミュニケーションを図りたいと考えたからです。先生から影響を受けているのは、両親にも一目瞭然だったと思います。超伝導は世界的な研究領域でもあるため、大学院へ進学し、先生のもとでさらに学びを深めたいと考えるのは、自分にとって自然な流れでした。振り返ると、ここが私の人生の分岐点です。世界に興味を抱くきっかけとなり、グローバルインターンシップでインドを訪れたり、スロバキアの研究留学に参加したりし、語学研修や異文化理解について学びました。この経験によって、将来は世界を舞台に働きたいという考えが強固となったのです。
就職活動では業界や職種を絞らずに、グローバルに事業を展開する企業であることを軸にしました。現在はドイツに本社を置く自動車システムサプライヤーのボッシュ株式会社で、北米や欧州ASEANなど、世界で自動車市場に提供するブレーキシステム装置のテクニカルプロジェクトマネージャーを務めています。ドイツ、中国、ベトナムなど多国籍のプロジェクトメンバーを技術面でまとめる任務です。ボッシュ株式会社はグローバルに事業を展開していますが、社内では基本的にドイツ人に合わせたルールが敷かれています。それが各国のメンバーにフィットするかというと、そう簡単ではありません。時には異文化社会ゆえの意見の相違や、衝突も生じます。それを上手く調整しながらプロジェクトを進行させることが私の職務です。一度も顔を合わせたことがないメンバーで事業を進めることもあるため、日々の業務ではもちろん苦労が伴います。しかし、異文化を感じながらグローバルな視点で業務を遂行するのはとても面白い。最近では各国のメンバーの傾向が分かり始め、効果的な説得ができるようになってきました。協調を図るためには、民族の気質や文化の理解とともに、「人は違って当然」と考えながら一人ひとりと対峙する姿勢が大切なのです。
今後のキャリアにおいても、グローバルに働きたいという思いに変わりはありません。特に米国のビジネスに携わりたい思いが強くあります。前職で米国に駐在していた経験もあり、その働き方や国民性、文化そのものなど多くの面で興味を惹かれる国でした。第二の故郷というと少し言い過ぎですが、いつかはまた戻りたいという気持ちがあります。この先も現在の業務に一所懸命に取り組みながら、技術と知識の研鑽を続け、変貌する世界の中心で自らの力を試し続けたいです。