インタビュー
自分の中の譲れない軸を持つこと。 それが確かな判断、行動の基本になる。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 丸川 達也さん
(デザイン工学部 デザイン工学科 2020年卒業)
私には「機械いじりが好き」という揺らぐことがない軸があります。理系を選んだのも、芝浦工業大学を志望したのも、自分の中の「好き」を優先した結果です。大学に入った頃はまだ将来の明確なビジョンは持っていませんでしたが、さまざまな電化製品や自動車、電気機器などに組み込まれる精密機械を扱う仕事分野で活躍したいとは考えていました。
デザイン工学科を選んだのは、プロダクトから生産、メカトロニクスなど、好きな機械について幅広い領域を学べることに魅力を感じたからです。実際に数多くの選択肢から自分のやりたいことを見つけていくステージとしてはとても恵まれた環境だったと思います。就職活動へ臨む時期になり進路を探る中で、機械いじりが好きである自身の性質と、デザイン工学科で習得した知識やスキルを発揮できる分野に、お客様の現場で技術的なサービスを提供するフィールドエンジニアの仕事に行きつきました。
いま、私が担当している業務は、お客様先へご訪問し、現場でレンズの形状や表面の粗さをナノレベルで測定する精密機器の点検・修理作業です。
またフィールドエンジニアは保守だけでなく、新たな機器導入や設置作業など営業活動にも携わります。大切なのは、「機械」と「人」のどちらにも繊細な目を向けること。お客様との丁寧な対話とサービス対応から少しずつ信頼関係を築いていくのがフィールドエンジニアの腕の見せどころになります。社会人になり自分が最も成長したと感じるのは、次に何をすべきかを考え、自発的に行動できるようになったことです。意見や相談をきちんと聞いて助言をくださる上司や、フォローし合える同僚が周りにいることも、働きやすさにつながっています。
前述したように大学で学んだ知識やスキルは、現在の業務に大いに役立っています。初めてレンズの表面を計測したときに、すぐに原理を理解できたのは研究室でプラスチックの表面の粗さを測ったことがあったからです。つい先日も、プロダクトデザインのスキルを生かして校正用のマスターを保持する新しい治具*を製作し、業務の効率と精度の向上を図りました。大学時代はデザイン画を書くのが苦手でしたが、演習で厳しく鍛えていただいたおかげで、スキルがしっかりと身につき、自信が持てるようになりました。徹夜して描いた渾身のデザインが再提出になってしまった苦い経験はムダではなく、確かな成長の糧になっています。
これからの目標は、技術者としても、人間としても尊敬できる上司を見習い、少しでも近づくこと。
知識と経験を蓄積して、お客様のニーズや課題に迅速で的確にお応えできる、頼れる存在になりたいです。また、昇格試験に挑戦する準備や、海外研修のチャンスをつかむために英語力も磨きたいと思っています。やりたいことが多く、未熟なために苦労することも多いのですが、充実した毎日を過ごしています。
最後になりますが、後輩たちへ伝えておきたいことがあります。それは、学生生活や就職活動、そして趣味においても自分の軸を持ってほしいということです。大学生が将来へのビジョンや達成したい明確な目標を持つことは簡単ではないと思いますし、実際にそう多くは居ないでしょう。でも「私はこれが好きだ」「これだけは譲れない」という何かを持つことで、それが思考したり、行動する上での軸になります。軸があれば判断を誤らずに挑戦できると思います。私は機械いじりが好きという軸を大切にしてきました。壁にぶつかり悩むことがあっても、自分の力で乗り越えられるようにあなただけの軸を見つけてください。
*治具:刃物や工具を加工物の正しい位置に導くための補助工具