インタビュー
卒業から14年。母校建設に携われる貴重な機会に感謝。
鹿島建設株式会社 笠原 照乃さん
(工学部 建築工学科2008年卒業)
卒業生として母校、豊洲キャンパスの新校舎建設に参加できたことに、とても感謝しています。卒業してから14年が過ぎましたが、改めて素晴らしいキャンパスだと思います。私が在学していたころに比べるとキャンパスの周辺に高層マンションやオフィスビルが建ち並んで、街も賑やかになりました。近隣の住民の方がキャンパスの中で憩う姿を見て、地域に根付き親しまれていると感じて、非常にうれしくなりました。
当時の建築工学科は1.2年が大宮キャンパス、3.4年が芝浦キャンパスで学ぶのですが私が芝浦工業大学に入学した時は、ちょうど大学3年生になる時に豊洲キャンパスが誕生するというタイミングでした。当時の私は都心の新しい校舎や施設で学んでみたいという気持ちが強かったと記憶しています。また、建物や設備などのハード面だけでなく、建築工学科の授業の一環として海外研修が組みこまれていた点も魅力に感じました。トルコ、ギリシャ、フランスへ行き、現地で実際に自分の目で見た建築物の数々は今でも忘れられません。なかでもギリシャのサントリーニ島やミコノス島で見た、白い漆喰で塗られた建築物群の美しさは、強く印象に残っています。
私が豊洲キャンパスの新校舎建築現場で担当したのは設備施工です。着工する前の2019年4月から着工前の樹木移植に伴う設備工事や施工検討など設計事務所や大学との打ち合わせを進めていました。母校の工事を担当するのは得難い機会ですから光栄でうれしく思う反面、プレッシャーも感じました。建築に精通されている先生も大勢いらっしゃるので、通常の現場とは違う緊張感がありました。新校舎の内装は天井がなく、配管や配線がむき出しの仕様になっています。通常の建築物では隠れている部分の色や見栄えにも配慮しなければなりません。建築学部のフロアには、他で使っていない特別な材質を使用するなど、学習的な効果を兼ねた施工になっている点も特徴です。配管の水平直角の精度にも気配りが必要で、意匠設計者と協議、決定し、協力会社への周知徹底・了承を得られるのに苦労しました。大規模工事は関わる人数が多く、指示や情報を現場でいかに正確に伝え、浸透させるかについて試行錯誤しながら遂行していきました。
この仕事の面白さは、同じ仕様や用途の建物でも現場での業務が毎回変化する点です。作業する人によって進め方が少しずつ違うため現場を担当するたびに新しいことを学び、成長を実感できます。時には失敗もしますが、そこから学ぶことも成長の糧となります。こうした学びの姿勢は、芝浦工業大学で養ったもので、困難な仕事に挑む際、支えになってくれました。
建設業界も人手不足が大きな課題です。私は将来的にはBIM(Building Information Modeling)やICTツールを活用して更に現場業務を効率化できるようにすることが目標です。BIMは建物の3次元モデルを作成し、設計、工事、維持管理などあらゆる工程で情報を共有するツールです。図面からは読み取れない実際の仕上がりイメージをお客様とも共有できるため施工後の手直しや現場合わせの不具合防止に効果があります。また、設計段階で、お客さまが竣工後の建物の運用計画まで立てやすくなるメリットもあり、BIMの普及・浸透は、これからの建設業界のワークフローに革新をもたらすツールとして注視されています。
コロナ禍を経て企業の日常業務がテレワークにシフトしたように、建設現場の業務もリモートで行えるようになれば、女性を含めて多様な人材が働きやすい環境を整備できます。建設業界で働く後輩たちのためにも現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に貢献したいと考えています。